バナナ名産地でパナマ病が広まる
ダバオ地方は、フィリピンの中でも最大のバナナ生産地の1つとして知られています。ですがバナナの天敵であるパナマ病が、農業従事者たちの栽培をはじめ、国内で多くの問題を引き起こしています。
ダバオ地方の農業省(Department of Agriculture:以下、DA Davao)はこのような問題を解決するために、影響を受けたバナナ農業従事者に向けてパナマ病に強いクローン苗を使用するように強く呼びかけています。
クローン苗 生産者に130万本配布も
このクローン苗はキャベンディッシュ品種を元にして作られたもので「GCTCV 218(Giant Cavendish Tissue Culture Variant)」の名前で知られています。
DA Davaoの関係者であるArlene Seguiro氏は、8月3日に開かれた記者会見において、「同クローン組織の主な配布先はコンポステラバレーおよび北ダバオ州の生産者である」と述べました。台湾のバナナ研究施設と提携中のDAから対象者に対し、計130万本の苗木が配布される、とも述べています。
昨今数年間で広まったパナマ病は、2012年にミンダナオ島を襲った台風パブロによって発生した洪水などが原因で広まったと同氏は説明しています。
GCTCV 218の信憑性はバナナ栽培者のRosale Secuya氏が実例を通じて証明しており、同苗木を8ヘクタールの農地に植えたところ、1,500本中135本しか感染しなかったとのことです。
バナナの天敵、パナマ病
パナマ病とは、つる割れ病の一種。 1950年代に南米パナマで確認され、バナナの代表的な病気の1つとして世界中に広まりました。
フザリウム属の真菌が根から侵入し導管を通って広がり、感染した株は維管束が破壊され、立ち枯れを起こしてしまいます。発見当時にはバナナ栽培の主流だったグロスミッチェル種は壊滅的な被害を受け、それからパナマ病に耐性のあるキャベンディッシュ種が広く栽培されるようになり現在に至ります。
また1990年に台湾で確認され、中国・東南アジア・オーストラリア・中東・アフリカなどに広がっている「新パナマ病」。TR4と呼ばれるフザリウム属の真菌が根から侵入し、従来のパナマ病と同じく導管を通って広がり、維管束を破壊し立ち枯れを起こします。
この真菌は、従来のパナマ病に耐性のあるキャベンディッシュ種のバナナに感染することから、今尚バナナ農家の頭を悩ませる問題となっています。