不法労働者 再雇用計画打ち切りへ
ムヒディン・ヤシン内相は5月31日、不法労働の外国人を改めて正規に雇用することを認める再雇用計画を、6月30日をもって打ち切ると発表しました。以後は外国人の雇用はすべて、出入国管理局との折衝を通じて行うことになります。
元より外国人労働者への依存を避けたいマレーシア政府は、2016年から厳しい施策を断続的に打ち出していました。産業界の反発を受けて緩和・撤回を迫られる状況が続いてきましたが、今後、産業界は段階的に外国人労働者への依存を早急に低減させることが求められます。過去1月12日には、2018年から外国人労働者について雇用者が全面的に責任を負う雇用者必須確約(EMC)を導入する意向を表明しています。
今回廃止される再雇用プログラムは、2016年2月に不法就労する外国人労働者の実態を把握することを目的に、不法就労外国人に対して労働許可証を付与するものとして発表。また製造、建設、プランテーション、農業、サービス業の労働者不足を補うのが目的でした。今年5月28日の時点で、74万4,942人の労働者と、8万3,919人の雇用者が登録しています。
6月30日以降、入管は不法就労の外国人や、そうした外国人を雇用している経営者の摘発を全国規模で実施し、一切妥協しないという方針です。 再雇用計画の適用を受けられない外国人に、自発的に本国への帰国を求める3プラス1計画は8月30日まで継続します。
過去の不法労働者におけるマレーシア政府政策
マレーシア政府は2016年以降、矢継ぎ早に外国人労働者に関する政策を出してきました。今案の再雇用プログラムの他、昨年3月には新規受け入れの凍結、外国人労働者にかかる年次人頭税(レビー)の増額を決定したほか、7月には最低賃金改定に伴う賃金引き上げを実施したばかりです。
しかし、こうした断続的な政策に対する各業界からの猛反発を受け、政府は政策の実施先送りや見直しを頻繁に行うなど、労務政策の不透明感が強まっていたのも事実。例えば2016年3月のレビー引き上げは、当初は製造業の場合では1人当たり1,250リンギット(約3万1,250円、1リンギット=約25円)から2,500リンギットへの増額を発表していたが、実際には1,850リンギットに引き上げ幅を圧縮しました。
また、2016年末にはレビーの負担を外国人労働者本人から雇用者に切り替える措置を突然発表し、2017年1月から実施する予定でしたが2018年に先送りしました。さらには2016年3月から実施している新規の外国人労働者流入凍結措置は、製造業では2016年7月以降、案件に応じて措置緩和へ転じたほか、2017年1月にはサービス業の一部でも緩和を決定。労務政策の迷走ぶりが散見されているマレーシア政府に、今回の廃止案件の動向が注目されます。