食品ごみで発電。シンガポール国立大学寮にスマホ充電施設

シンガポール国立大学(NUS)寮のラッフルズ・ホール駐車場に、ロッカーのような形をした機器が設置されました。

これは携帯電話やタブレットコンピューターの充電施設で、これまで廃棄されてきた食品ごみを燃料にした発電システムが内部で動作しています。

食品ごみに微生物を加えて嫌気発酵

システム開発を主導したのは、化学・生体分子工学部のトン・エンワー准教授と環境研究所のザン・ジンシン特別研究員。上海交通大学との共同事業としての設備展開となります。

発電設備は、投入された食品ごみに嫌気性微生物(増殖に酸素を必要としない生物。多くは細菌であり、古細菌や真核微生物の中にも存在する)群を加え嫌気発酵させるもの。

嫌気性発酵は空気(酸素)に触れない状態で活動する微生物の働きで有機物を分解する発酵方法。発酵の過程で生じるバイオガスを熱源に発電して充電を行う仕組みです。

匂いを出さない発酵処理で快適な電力を

発酵過程を経た食品は栄養が豊富で、液体肥料としての利用が可能とされています。発酵処理を施すため、食品ごみ特有の不快な匂いを出さないことが利点です。

現在は1日40キロの食品ごみを処理していますが、システムの規模を大きくすることで同200キロのごみを処理できるとのこと。

セルフハイブリッドシステムで公営住宅での運用も期待

発酵熱で温水を作り、発酵タンクを適温の50度に常時保ちます。生産される電力で、ごみ投入ポンプ、照明、ファンなど付属設備を動かし、余剰分を蓄電し携帯機器の充電に利用するという「必要な電力を自前で賄うシステム」とされています。

炭水化物、タンパク質、脂肪の含有量の多い食品ごみが、よりガス産出量が多くなるとのこと。約1トンのごみから200~400キロワット時の電力を生産でき、1万3,000~2万6,000台の端末の充電需要を賄えるとされています。

食品ごみが電力不足の解決に

トン氏は、公営住宅団地でも運用できないかを探っています。昨年のシンガポール全体の食品ごみは約81万トン。これらがシンガポールでPC・タブレットの充電電力として機能する日も近いかもしれません。

過去には日本で大阪ガスがよく似た実験を行っています。その際には共用部に設置する装置で食品ごみからガスを生成し、通常の都市ガスに混合してガスコージェネレーションシステムの燃料として利用していました。

この際に利用されたエネルギーは停電時にも電力を供給する役割を果たしたとされ、食品ごみからの発酵が秘めたエネルギーに今回改めて注目が集まっています。

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