フィリピンが米の輸入自由化へ 国内生産者からは大きな不満相次ぐ

フィリピン 米の輸入自由化法案が成立

現在日本では1日に118gの年間米消費量であるのに対し、フィリピンは1日325gの米を消費することからも分かるように、フィリピンは世界屈指の米消費大国として知られています。ですがフィリピンは米を自給することができず、同時に米輸入大国でもあります。

フィリピンの市場には密輸された米が堂々と並ばれていたり、輸入米を扱う業者によっては米そのものの市場価格も操作されている状態です。またドゥテルテ政権になってから食料価格が高沸したことも米が原因との見解が強いです。そこでドゥテルテ政権は、米の輸入規制枠を撤廃する法案を成立させました。

新法案では、民間業者が自由に米を輸入できるようになります。この法案は大統領の署名を経ることで、近くに発行される運びとなります。ですが今回の自由化法案により、国内農家からは非常に大きな反発が発生しています。輸入米は国内生産の米と比べると全体的に価格が安く、大量に輸入されることで国内産米の需要が下がることが見込まれるからです。

国内農家はどうなる?対策と懐疑的な声

このまま対策もなされずに自由化が進められると米輸入業者が利する割合が多く、政権側は『コメ供給体制を安定させ米価を押さえ、コメ業界の談合体質の一掃、業界とコメに関わる政府関係者の汚職根絶』と述べているものの、従来の米制作の問題点が露呈された結果になったと言えるでしょう。

従来のフィリピンでは、米輸入の主体は国家食糧庁でした。同庁のは、国内米生産農家からの買い付けと備蓄米の確保に専念する業態となります。ですが巨大組織でもある同庁の改革方針は示されていません。

今回の措置により、政府は計140億ペソの支出を予算化しました。これは「農務省が持つコメ増産プログラム70億ペソ」と「国家食糧庁の国産米の買い付けと備蓄米確保用の70億ペソ」としての決定です。農務省は現在、米農家に対して付加価値の高い農作物への転作を進めているものの、農家にとってはリスクの高い選択になることから懐疑的な意見が多くなっています。

GDPの割合低く伸びないフィリピンの農産業と原因

フィリピンの農業は気候変動、天災に弱くGDPに占める割合も低いとされています。さらに近年アセアン内で高い経済成長率を強調するフィリピンでは、農業自体が足を引っ張る状態となっています。実際、2018年度の産業部門別の経済成長率の貢献度は年度成長率が6.2%の中で、農業部門は0.1%とほとんど伸びていないことが明らかになっているのです。

これは農業を含む第一次産業の生産性がフィリピンでは置き去りにされている結果となり、最近の歴代政権でも農業部門の成長率が良かったのはエストラダ政権で6.5%。最低はラモス政権の0.8%となり、他の政権でも1~2%台という低成長となっています。

ここで問題となるのが、フィリピンの労働者数の3分の1が何らかの農業に関係していることです。これは全世帯のなんと4分の1に達するという結果もあり、このため農業従事者を尊重しない政策によってフィリピンの貧困がなくならない要因の1つとされています。

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