フィリピンの重要交通インフラ「ジプニー」の過去とこれから
「ジプニー」という乗り物をご存知でしょうか。ジプニーはフィリピンの全土で見られる乗り合いタクシーで、現地ではシンプルに「ジープ」と呼ばれ親しまれています。フィリピンでジープと言えば、車種としての意味合いよりも乗り合いタクシーとして通じるほどに浸透している交通インフラの1つ。
車体形状は様々で、キャブ・オーバー・ザ・エンジンのものも大小存在し、エンジン・アクセスのためのキャブ前傾機構も残されているものがあります。戦後にアメリカ軍が払い下げたジープを改造して乗り合い用車として仕立て上げた歴史があり、国民に長年親しまれてきました。
ですがこのジプニーは、交通渋滞や大気汚染の原因として批判されてきた歴史もあります。とは言え、交通インフラが全土を通して貧弱であるフィリピンでは、国民の重要な交通機関として利用されてきました。そんなジプニーをとうとうスクラップにする方針を示したのがフィリピン運輸省。
|
という方針の上、ジプニーの整備を見込んでいます。
インフラ整備にもなり環境保全にもなり、さらにはオーナーへの融資も受けられるこの方針。一見理想的にも聞こえますが現実はなかなか上手くはいかないようです。現在のジプニーの新車値段は160~180万ペソ(約360万円)。所有者は元々零細であることが多いため、融資を受けた上でも「高額な新車に乗り換える」ことは非現実的であるとの見解があります。
長年の無策化が露呈 路面電車へのインフラ移行なるか?
そもそもフィリピンでは「財産」である車をスクラップにするという感覚は多くはありません。だからこそ今尚、製造後20年、30年の車が普通に使われているもです。本件を除外しても旧車から新車に乗り換えるのは可処分所得の高い層のみとなっており、まだまだ少ないのが現状です。
老朽化が近づいてきたジプニーは(ジプニーに限らずフィリピン内の多くの車は)地方に流れ、その地で延々と使われることになるのが一般的となっています。ですがその結果、大気汚染が地方に広がっているのもまた事実……。政府はこの大気汚染対策として「電動ジプニー」を日本の企業などと連携して販売を試みていますが、価格、充電設備、整備の面でフィリピン国内に普及するのは難しい状態になっています。
マニラ首都圏だけでも現行7万台以上走行しているジプニー。新たな鉄道などの大量輸送機関敷設が進んでいないために、重要な交通機関としてジプニーに頼るしかありません。今フィリピンでは路面電車の開発設置計画が進んでいることも踏まえながら、ジプニー運行者にしわ寄せが来ていると言えるでしょう。