シンガポール古来の生姜が絶滅の危機に
シンガポールの生姜の歴史は長く、中でもシンガポール固有の多雨林に生息する生姜「シンガポール・ジンジャー」は数百年前より栽培されている古い品種の1つ。ですがそのシンガポール・ジンジャーが絶滅の危機に瀕していることを知る人は多くありません。
シンガポール・ジンジャーが正式に発見されたのは2014年。国立公園局とシンガポール国立大学(NUS)のチームで、今年3月に研究論文を発表しました。シンガポール植物園が保存プロジェクトに着手し始めたことで、改めてこの品種の存続が注目されています。
シンガポールジンジャー、絶滅危機の背景
シンガポールジンジャーは、シンガポールの原初の多雨林に生息している生姜。ですが現在、野生で現存しているものは50株にも満たない状態です。多雨林の99%は都市開発のために伐採されてしまっていて、蜂などを初めとした受粉生物の減少も理由であると考えられています。
茎の長さは1メートル以下で、葉は細く艶があり、花は紡錘形であることが特徴。また開花時期以外は周りの植物との見分けが困難であることから、発見が遅れたものとされています。そしてシンガポールジンジャーの最大の特徴の1つに「非常に長寿」であることが挙げられます。
現存する野生のシンガポールジンジャーは、多雨林の伐採が始まった150年前から存続する株であると研究者は推測しています。主な生息場所は、集水地のセントラル・キャッチメント。そしてブキティマ自然保護区です。
受粉による繁殖で保存・繁殖
研究にあたって採取した株の系統を調べたところ、系統がそれぞれ別で、他の株との受粉によらず、自身でクローンを作り存続してきたことが判明しました。株の絶対数が少ない上に広い範囲に散らばって生息しているため、受粉が困難であることも株数減少に影響しているようです。
シンガポールジンジャーのような無性生殖では有害な遺伝子が発現する可能性があることが懸念され、最悪のケースでは種が絶滅する恐れもあります。このため、植物園では受粉による繁殖で保存を図っていく方針です。
シンガポール植物園では1859年からジンジャーの研究が行われており、現在はジンジャーガーデンで、生姜の仲間たちが1000種以上も栽培されています。長年のジンジャーの研究で培われた技術や環境が、今回のシンガポールジンジャーの絶滅危機を救う手立てになるのか期待が高まります。