アディダス・ナイキ、工場労働者への賃金が正当ではないことへ懸念
6月14日から7月15日まで開催されている2018W杯。今回のワールドカップのメインスポンサーを務めているのは、アディダスとナイキの大手2社。同社スポーツウェアの生産コストの比率を落としていく最中で、製造工場で働く労働者の多くが正等な賃金が支払われていないことが問題視されています。
市民団体は11日、工場労働者への正当な賃金を保証しなければならないとの声明を発表しました。アディダス及びナイキは製造拠点を中国からインドネシアのような人件費の安い国へ移転しつつも、彼らへの給与の元手となる「一足の靴あたりの生産コスト」は1990年初頭以降年々低下しています。
W杯出場国半数以上のチームのユニフォームが、悪環境の生産工場に移転
Clean Clothes Campaign(CCC)は、 「労働者の賃金に行きつくナイキとアディダスの靴の生産コストの比率は、1990年代初めと比べて、驚くなかれ30%も減少している(ナイキの場合、1995年に4%だったが、2017年は2.5%に減少)」と発表。「両ブランドは、シャツや靴の縫製労働者よりもサッカー選手にお金をかけるようになったようです」と述べています。
さらにCCCは、現在佳境に入ったロシアのワールドカップに出場する32チームのうち、22チームのユニフォームを提供している2社の生産拠点が、賃金が低く、労働者の虐待が蔓延している、インドネシア、カンボジア、ベトナムへ移ったと述べました。
人権団体・労働組合・労働者は「これら3カ国は、繊維業労働者の平均給与が家庭の基本的なニーズをカバーするための賃金、いわゆる【最低限度の生活ができるだけの生活賃金】よりも45~65%低い」と指摘しています。
2社の今後の対労働者対応は
これを受けてナイキは「会社は残業手当および法的に義務付けられた給付を含め、少なくともその地域の最低賃金、または一般的とされる賃金を労働者に支払わなければならない」と述べています。またナイキの広報担当者は「私たちは、長期的かつ体系的な変化を支援するために、政府、製造業者、NGO、ブランド企業、労働組合、工場労働者との対話を重視しています」と述べました。
対してアディダスは、「サプライチェーン全体で安全な労働条件と公正な賃金を維持し、少なくとも法律で定められている最低賃金を支払うように義務付ける」と述べました。同広報担当者は 「インドネシアのアディダス工場で働く労働者の月平均賃金は、現在の最低賃金をはるかに上回っています」とのことです。